[メイン3] アンサージュ : ──アンサージュ家、居間。

[メイン3] アンサージュ : 朝食の席。

[メイン3] アンサージュ : 「うっ……!?お、お父様……これって……」
ごはんを口に運んで。口を押さえる。

[メイン3] アンサージュ : 「……!? い、いえ……何でもありません……」

[メイン3] アンサージュ : 砂のような食感を食んだ。なのに、同じテーブルを囲むお父様は不思議そうな顔をしていて。

[メイン3] アンサージュ : ……私が特別におかしいのだということはすぐに理解できました。

[メイン3] アンサージュ : 記憶の無い昨日のことを聞いても、私の様子に何も変わりはなかったと言われ。
違和感と空白の時間だけが残っている。

[メイン3] : 「アンサージュ、体調が悪いのかい?」

[メイン3] アンサージュ : 「いえ……大丈夫です。でも、少しだけ……少しだけ、お部屋で休ませてください」

[メイン3] アンサージュ : 砂のような朝食を食べて、席を立つ。
でもその足は、自分の寝室には向かない。

[メイン3] アンサージュ : ……何かがあったんだ。確かめないと……。

[メイン3] アンサージュ :

[メイン3] : 「──ジリリリリリ……」

[メイン3] 壮年の男 : 「はい。■■家です」
年老いた男の声で、受話器から応えられる。
■■家──アンサージュの生家だ。

[メイン3] 巴マミ : 「……!……もしもし、インキュベート家使用人の巴と申すものです!アンサージュ様にお取り次ぎをお願いしたいのですが……!」

[メイン3] 壮年の男 : 「ああ……貴方が。娘から話は聞いています。私が当主の──」
「ですが、申し訳ありません。娘は先ほど、慌ただしい様子で家を飛び出してしまい……」

[メイン3] 巴マミ : 「……っ!」

[メイン3] 壮年の男 : 「シアターに行かないと、と言っていましたが……ご用件があれば伝えておきます」

[メイン3] 巴マミ : その様子からすると、彼女も……
「……いえ、感謝いたします!もしこちらに戻られた際は、巴マミもシアターに向かったとお伝えいただければ…!」

[メイン3] 巴マミ : 「……すみません、時間がありませんので失礼します!」

[メイン3] 壮年の男 : 「かしこまりました」
「しかし、ミス・巴と話せるとは幸いです。娘がいつも──」
年寄特有の長話が!

[メイン3] 巴マミ : 「……!?」

[メイン3] 壮年の男 : 「おや、お急ぎでしたか。申し訳ございません」
始まらなかった。

[メイン3] 巴マミ : ふぅ……と胸を撫で下ろす。

[メイン3] 巴マミ : 「よければ、後ほどゆっくりとお話いたします。ありがとうございます」

[メイン3] 壮年の男 : 「ええ、良い一日を」

[メイン3] : 丁重に付け加えたのち、ぷつりと電話が切れる。